承継コラム vol.9

「社会価値創造への挑戦」


人間はもとより企業においても、この世に一人や一個の組織で存在しているものはありません。企業は人の集まりで構成され、社員・顧客・仕入れ業者・金融機関・地域住民など様々な利害関係者(ステークホルダー)や社会との関係によって成り立っています。これら利害関係者や社会との関係を無視した企業活動は、社会の反逆者として早晩葬られることになるでしょう。この世は「つながり」(諸法無我)によって成り立っていること、よくよく理解し、経営に生かしていかなければなりません。

 

そもそも仕事(職業)はそれ自体、携わる者の生計維持となるものであり、また組織維持や自己実現、更に社会への貢献(奉仕)となるものです。経営者の不正や邪悪な考え方により、企業活動の結果生み出された「利益」が、まるで疫病でも罹ったような貪欲な「罹(り)疫(えき)」にならないとも限りません。しかし仕事を天職とし社会的使命感に燃えて行った正しい経営は、「利益」と「公益」が一体化し、企業価値や社会価値が増大すること間違いありません。企業存続と持続可能な社会を築いていくために、企業と社会の両方に価値が生み出される工夫が必要です。米国ハーバード大学のマイケル・E・ポーターらは、CSR(企業の社会的責任)を発展させて、企業価値と社会価値を両立させる新しい経営戦略フレームとして「CSV(Creating Shared Value)」(共有価値の創造)を提唱しています。

 

CSVは、社会の抱える問題を社会と共に解決しつつ、自らも発展することを目指す経営戦略と言えるものです。日本資本主義の父と言われた渋沢栄一から、「論語と算盤」の精神を教えられた清水建設は、自社の建設した建造物に係わる温室効果ガスの排出削減を目指して経営を行っています。また住友林業は近江商人の「三方よし」の精神を生かし、荒廃した山への植林による森林の再生を行い、地球環境保全に役立ちつつ、木材の安定供給など本業につなげ森林経営を行っています。(「CSV経営」NTT出版参照)

 

「企業は社会の公器」(松下幸之助)であり、決して単独で成り立っているものは一つとしてありません。我々が社会を創り、また社会によって我々が創られていることを深く理解し、自社の経営理念に沿った社会との一体化を目指した企業経営を行っていくことが大切です。現在社会が抱えている問題と企業自身の問題を重ね合わせ、これを自身の問題としてどのように解決していくか、企業価値創造と社会価値創造を同時に実現する道を真剣に考えていくことが大切です。


以上
創新事業承継プロジェクトチーム 代表 公認会計士・税理士 高良 明

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