承継コラム vol.11

「ここに生ききる」


今我々はこの世に生きています。しかし本当に充実した意義ある人生を送れているか否か、自身の心に謙虚に耳を傾けて問うてみる必要があります。人間には、眼・耳・鼻・舌・身・意という六つの感覚器官があります。この感覚器官にはそれぞれ対象があってはじめて機能します。眼には形や色、耳には音、鼻には匂い、舌には味、身(皮膚)には接触、意には心が対象です。この心は無限に近い広がりを持っています。ここに生きているという感覚は、この六つの感覚器官を通じて実感できるものです。

「ここに生ききる」の「ここ」には、三つの意味が含まれています。一つには「空間・場所」、二つには「物事・事柄」、三つには「個々・個別」ということです。まず「空間・場所」の意味というのは、自分自身がこの場所に立脚している、身も心も立っているという意味です。この空間の場に意識がなければ自身の存在価値は生まれません。二つ目の「物事・事柄」の意味とは、この事に集中しなければ何事もなしえないということです。また三つ目の「個々・個別」という意味は、物事はすべて繋がっているものの個々別々にその意味や目標があります。これらを分類整理しなければ機能的・効率的に経済活動ができません。個々別々に焦点を当てて、その目標を目指していくということが大切です。

更に「生ききる」という語感には、生きることに強い主体性を持つという意味です。他から安易に影響されず、自己の信念を持って主体的に生きていくことが大切です。人生の舞台で演技するのは自分自身であり、そうした積極的・主体的な生き方をしなければ、自己の夢を実現するには遠く及びません。このように「ここに生ききる」というたった七語の短い言葉でも、静かに考えてみると深い意味があり、人生や経営の歩み方を見直すことができると思います。

中国古典の「礼記」や「大学」の中に、「心ここに在(あ)らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食すれどもその味を知らず、此れを、身を脩(おさ)むるはその心を正すに在り」という言葉があります。六つの感覚器官ことに無限に広がる意識というものがより健全に機能しなければ、物事を正しく視ることはできません。また精神をここに集中しなければ、物事を成就することができません。精神は六つの感覚器官の王様です。精神を研ぎ澄まし、目的や目標に集中して、「ここに生ききる」人生を送っていきたいものです。 


以上
創新事業承継プロジェクトチーム 代表 公認会計士・税理士 高良 明

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