承継コラム vol.22

「社員を幸せにする経営」

 

一般的に企業経営とは、「ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源を使って社会のニーズに合った価値を創造し、利益を追求する組織運営のこと」と経営書などに書かれています。つまり①事業目的をもつ組織運営である、②ヒト、モノ、カネ、情報等の経営資源を効率的に使う、③社会のニーズに合った価値を創造して利益を上げる、ことなどが主な前提条件となっています。しかしよく考えると、企業(組織)の本当の目的は何か? 人を他の経営資源と同列に考えてよいのか? 利益を上げてこれを何のために使うのか? など様々な疑問が生じます。この疑問を見事解決して、社員の幸福を追求し、地域社会に貢献しながら年々増収・増益の記録を達成している企業があります。


長野県伊那市で「かんてん」を製造販売している伊那食品工業株式会社です。1958年創業の同社は、「かんてん」一筋に生産してきましたが、合わせて人間の幸せを生産してきた抜群に「いい会社」です。同社の社是は、「いい会社をつくりましょう―たくましく そして やさしく」です。なぜ「いい会社」なのか? 塚越寛同社代表取締役会長はにこにこ顔で、「いい会社とは、単に数字が良いというだけでなく、社員の幸せが叶えられるバランスのとれた、『あの会社は、いい会社だね』と言ってくれるような会社」だと話されます。


「会社は社員を幸せにするためにある」と会長は強調してやみません。会社は社員の幸せを図るために存在し、そのためには会社は永続しなければなりません。一時の利益で喜んで会社が永続しなければ、社員を不幸に陥れ、社会の罪悪にもなるからです。同社の根本理念の根底には、二宮尊徳の考え(言葉)が根強く生きています。


―遠くをはかるもの者は富み、近くをはかる者は貧す―


短期の利益追求では、「遠きをはかる」経営をすることはできません。「遠きをはかる」経営は、10年、20年、100年先を考えて、種を蒔き、年年歳歳根気強く丁寧に育てていくことが必要です。いい時も無理をせず、一歩一歩着実に、低成長を志して、自然体の経営に努めていかなければなりません。会長は、この経営のやり方を「年輪経営」と呼び、ブームに乗った急成長を最大の不幸と敵視しています。したがって売上や利益は、「いい会社」すなわち社員を幸せにするための手段であって、決して目的ではないのです。利益は健康な会社にとって、社員に幸福をもたらした結果の「ウンチ」でしかないのです。社員が「前より幸せになった」と実感できることが、会社の最大の成長であり、会長の最高の喜びと言えましょう。


企業(会社)の目的が、社員の幸せによる企業の永続であり、人は単なる経営資源でなく目的そのものであること、利益はその結果のカスであることを信条として経営されている同社に敬意を表すると共に、小生の長年の疑問が解けたことに感謝致します。

以上
創新事業承継プロジェクトチーム 代表 公認会計士・税理士 高良 明

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