承継コラム vol.30

「中国古典・人間学(大学④)」

 

「修身」すなわちわが身を修めるには、徳を積むことが大切と第6章で述べています。 「君子は先ず徳を慎む。德あればここに人あり、人あればここに土あり、土あればここに財あり、財あればここに用あり。徳は本なり、財は末なり。・・」(君子は何よりも自分の徳の充実に気を付ける。自分の徳が充実すると、自然に民衆が帰服してくる。民衆が帰服してくると自然に国土が保持できる。国土が保持できると、そこで財物も豊かになる。財物が豊かであると、そこで流通も盛んになる。徳が基本であって、財物は末端なのである。)

民衆の心をつかまえて、民衆から慕われることができれば国家は保持することができますが、反対に民衆の心を失って、民衆から見放されたら国家を滅ぼすことになります。だからこそ、民衆から慕われるように、君子は徳を積むことが大切なことだと強調しています。これを企業経営に置き換えて考えてみましょう。
「経営者は徳を積まなければならない。德あれば社員が帰服し結束して仕事に従事し、そうなると良き社風・風土ができ、生産性が上がって財政が豊かになり、取引が盛んになる。だから経営者の徳が本であって、財は後から付いてくるものだ」と解釈できます。

では、ここでいう「德」とは何でしょうか?国語辞典を繙くと、①正義が身に備わって外に表われること、立派な人格②心が正しく、行いが善であること③正義④天性⑤めぐみ、恩恵⑥幸福⑦富、財産⑧利益、とあります。「徳」は「幸福」や「富」「財」「利益」につながっていることがわかります。ギリシャの大哲学者アリストテレスは、徳を優れた性質「卓越性」と考え、知性的德と倫理的德に分類しました。知恵とか賢慮は「知性的德」であり、誠実や寛厚や節制、奉仕などは「倫理的德」に属します。これらの德すなわち卓越性の向上をめざし、これらを踏まえた活動が人間の幸福につながると説いたのです。

このように「德」を積むことは決してトップリーダーのみならず、誰しも必要なことであって、幸福への道につながるのです。徳を積むには「己の人生の使命」を観じ、人間のあるべき姿に向かって「良き習慣」付けと「努力」が必要です。決して理屈ではありません。徳が根本であって、財物は末端なのです。樹木に例えれば、根が「德」であって、花や実は「財物」に当たります。根をなおざりにして末端の花や実だけ必要として力を入れても、長続きせず、争いの種になるだけです。根は表面には現れないものですが、しかし必要不可欠なものであり、必ず心に響くものです。 


以上
創新事業承継プロジェクトチーム 代表 公認会計士・税理士 高良 明

主催 : ㈱創新  事務局: ㈱とんがりコラボ TEL: 03-6843-0070 FAX : 03-6843-0069 E-mail : info@toncolla.com