承継コラム vol.31

「中国古典・人間学(老子①)」

 

『上善は水の若ごとし。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪にくむ所に処(お)る、故に道に幾ちかし』(老子第8章) 蜂屋邦夫氏の訳によれば、「最上の善なるあり方は水のようなものだ。水は、あらゆる物に恵みを与えながら、争うことがなく、誰もがみな厭(いや)だと思う低いところに落ち着く。だから道に近いのだ」となります。さらに続いて、「身の置きどころは低いところがよく、心の持ち方は静かで深いのがよく、人とのつき合い方は思いやりを持つのがよく、言葉は信まことであるのがよく、政治はよく治まるのがよく、ものごとは成りゆきにまかせる(※)のがよく、行動は時宜(じぎ)にかなっているのがよい。そもそも争わないから、だからとがめられることもない」とあります。(※人事を尽くして後自然の成り行きに任せると解釈したい)

水は冷やせば氷となり、氷に熱を加えると水に戻り、更に熱を加えると水蒸気に変化します。このように水という液体が固体になったり、気体になったりするわけですから千変万化の性質を持っています。また一方「水は方円の器に随したがう」(荀子じゅんし)と言われたように、水はあらゆる器の形に順応してそれに随うため、古来より比喩の対象として尊ばれてきました。ことに有名なのが、上記の老子の第8章に述べられている言葉です。老子が最も重視したのが、不争・柔弱・謙遜の三つですが、水はこれらの性質をことごとく備えています。また、器に水を入れてこれを傾けても、水は一定の水準を保ちます(公平性)。しかも水が集まって水力を増せば、岩石を打ち砕く怒涛のエネルギーをも持っております(勢力)。このように人間に欠かせない水は様々な性質を持っており、『兵の形は水に象かたどる』(孫子)として兵法としても活用されてきました。人間の生き方において、水の性質を参考にしたいものです。

また、生物は水の中で生まれ、水と深い関わりを持って生命を維持しています。水なしでは生きることはできません。人間も然り。大人の体の約60パーセントは水分で、残りは脂肪、タンパク質、鉄分、塩分などですので、ほとんどが水によって維持されているといっても過言ではありません。人間の生命を維持するには水ほど大切なものはありません。
『曹源そうげんの一滴水』という禅話があります。曹源寺の儀山ぎざん禅師が宜牧ぎぼく修行僧に水を持ってくるように命じました。その修行僧は桶の残り水を捨てて水を汲みに行ったところ、禅師から大喝だいかつされました。『わずかな水でも木の根を潤せば活かして使えるではないか』古い水は庭木にかけてやれば、木も喜び、水も生きるわけで、水一滴も活かして使うことの大切さ(もったいない精神)がこの話で伺えます。 


以上
創新事業承継プロジェクトチーム 代表 公認会計士・税理士 高良 明

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