承継コラム vol.37

論語と経営(5)

 

『利に放(よ)りて行なえば、怨(うら)み多し』
(現代訳:利益追求を優先させると、人の怨みばかり買う羽目になる)

人間には欲というものがあり、利益を求めるのは当然であります。その利益を求める欲があるからこそ人類は長きにわたって生存し社会が発展してきたと言えます。とくに資本主義、自由主義社会においてはなおさらのことです。孔子も利益追求を否定しているわけではありませんが、すべからく利益追求を中心にした人生や経営は人の怨みを買うことになり、大変危険であると忠告しています。自利=利他となれば大変よろしいのですが、とかく自分の利益は他人の不利益になることが多いものです。

「企業の目的は利益の最大化」とばかりに、法を犯し、人をだましたりして利益のためなら何でもするという企業経営のあり方は、早晩社会から見放され葬り去られること必定です。企業は社会の役に立ち、存続していくことに価値がありますので、そのためには一定の利益が確保されなければなりません。だから利益は必要なのですが、社員を犠牲にしたり、社会をだましたりして法や倫理を犯してよいわけがありません。

孔子は別の項で、『利を見ては義を思う』と述べ、利に直面した場合、その利が義や理すなわち道にかなっているか否かをよく考えて行うことが大切と教えています。大丸百貨店の企業理念である冒頭の「先義後利(せんぎこうり)」は、創業者である下村彦右衛門が荀子(じゅんし)の『義を先にして利を後にする者は栄える』から引用したもので、全く同様の趣旨です。企業が資金に窮したとき、経営者はどうするか、利を見て義を思うことができるか、落ち着いた先義後利の判断ができるか否か、大変大事なところです。確かに「背に腹は替えられぬ」とばかりに安易なリストラを考えがちです。しかし一旦立ち止まって義を考えなければなりません。利を義より先行した経営は人の怨みを買い、早晩成り立たなくなるものです。

利益は理益になるように経営をしていくことが望まれます。『理益』は理念に基づく経営及び道理に基づく経営による利益です。ロータリーでは「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」という標語がありますが、これは道理に基づいて他人によく奉仕すれば、必ずや多く利益が報いられるというものです。義(奉仕)を利益より先にすることを教えています。どうか利益と理益の見極めをきちんとして、自利=利他となるよう正しい経営を心掛けて頂きたいものです。 


以上
創新事業承継プロジェクトチーム 代表 公認会計士・税理士 高良 明

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