承継いろは vol.14
「創業してから今日まで必死で頑張ってきた。その甲斐あって、業績は着実に伸び、お客さまも増え、従業員も相当な人数になった。また、経営体質を改善してリーマンショックも何とか乗り切り、安定して事業を継続できる企業体質を作り上げた。ただ、60代に入って引退を考える年齢になったが、子供たちはそれぞれ自分の人生を歩んでおり、後を継ぐ気はない。会社の幹部の中には、経営者として後を託してもよい、と考えている者がいるが…。」

価値観の多様化、少子高齢化の影響により、身内に後継者がいない、という悩みをかかえる経営者が増えています。確かに、身内が後を継いでくれれば一安心ですが、その気がない者に後を継ぐことを強制できませんし、また、適切でもありません。しかしながら、従業員や取引先のことを考えると、廃業することもできない、というのが現実です。

その対策の一つとして、M&A、つまり、会社そのものを第三者に売却してしまう、という方法があります。オーナー経営者には売却代金が入って引退後の生活が保障されますし、会社自体は存続するので、従業員にも取引先にも、取り敢えず、迷惑をかけることはありません。  しかしながら、会社の経営方針などは新しいオーナーの考え次第で、企業のカラーが変わってしまうということはあり得ますし、事業の転換に伴うリストラなどによって従業員が職を失う場合もあります。

身内以外の者に経営を引き継ぐもう一つの方法として、企業内承継、つまり、自社の役員や従業員に経営を譲る、ということが考えられます。自社の役員等を後継者とすることにより経営方針や企業カラーなどの継続性を確保することが可能となるわけです。  ただ、この企業内承継にもやっかいな問題があります。通常、中小企業では、経営者が会社支配権を有するオーナーでもあり(オーナー経営者)、これは、経営者が交代する場合にも維持される必要があります。そして、優良な会社で、自社ビルや工場等の資産を保有していると、会社(株式)の価格も高くなるのですが、後継者であるとは言え、身内でもない役員等にこれを無償で譲るわけにはいきません。結局、後継者が会社支配権(株式)を取得するためには多額の資金を用意しなければならないのですが、後継者がこれを調達するのは困難です。

そこで、このような場合の対策の一つとして、事業譲渡の活用を検討してはいかがでしょうか。「事業譲渡」とは、一般的には、一定の事業目的のために組成された財産(商品、工場、ブランド、取引先等)の全部または重要な一部の譲渡、と言われています。しかしながら、企業内承継の場合に、これを言葉どおりに実行すると、その譲渡価格はやはり高額となります。そのため、ここで活用しようという「事業譲渡」とは、不動産等の大きな資産を除いた「事業」そのものの譲渡です。つまり、①後継者である役員等が出資して新会社を設立、②現在の会社(現会社)が、新会社に、事業のみ(例えば、精密機器の製造販売など)と従業員、顧客を譲渡する、③現会社は生産設備や社屋等を保有して不動産管理会社となり、これらを新会社に賃貸して賃料収入を得る、というモデルです。これであれば、事業の譲渡代金を低く抑えることができるとともに、現会社のオーナー一族も賃料収入を得ることができます。

もちろん、この方法でも、金融機関に対する債務の保証や担保の処理、許認可等の引き継ぎなどの問題を解決しなければなりませんから、万能ではありませんが、問題解決の突破口になります。

このように、事業承継では、様々な面から問題が生じ、それらを総合的に解決していくことが重要となります。従って、経営者の皆さんには、色々な分野の専門家による多面的なサポートを受けるようお勧めします。
以上
創新事業承継プロジェクトチーム 吉岡毅法律事務所 弁護士 吉岡毅

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