承継いろは vol.25

企業経営のリスクマネージメントの一環として ~ 「任意後見制度」 ~

わが国の中小企業経営者の高齢化も進行しているため、経営者の交代、つまり、事業承継が問題となっていることはご存じのとおりです。

しかしながら、いざ「事業承継」に取り組む、といっても、後継者の選定に始まり、経営者教育、経営権の承継等の法律上・税務上の問題のほか、従業員や取引先、金融機関等から後継者として受け入れてもらう等、様々な課題があるため、その対策を進めるには、一朝一夕ではすまされず、少なくとも5年、場合によっては10年、といった長い期間が必要です。

ところが、現経営者が高齢である場合、事業承継対策を進めている間に、突然の事故や病気によって意識を失う等、意思表示ができなくなる、という危険性があります。

さらには、近時、クローズアップされている「認知症」によって正常な判断能力を失う、ということもあり得ます。

 

社長がこのような状態になった場合、会社としては、他に代表取締役がいる場合にはその方が、いなくとも、他の取締役から代表取締役を選ぶことによって、法律的には、契約関係の処理等を行うことができます。ところが、社長が大株主でもある場合、すぐに代わりの人を、というわけにはいきません。

その処方箋として、まず、考えられるのが、成年後見制度です。つまり、親族が家庭裁判所に申請して成年後見人を選んでもらうのですが、これには、幾つかの問題があります。

まず、本人が能力を失ってから申請をするのですが、家庭裁判所が成年後見人を選任するまでに、通常、数か月程度はかかりますので、早急な対応は難しいでしょう。また、成年後見人の人選についても、裁判所に候補者を推薦することはできますが、必ずしも希望通りになるとは限りません。

特に、親族内でもめごとがあったり、ご本人の資産の額が大きい場合は、弁護士等の第三者が選任される可能性が高くなります。

 

そこで、その対応策として、「任意後見制度」があります。これは、ご本人に判断能力がある間に、将来自分が判断能力を失った場合に備え、予め、後見人になってもらう予定の方(任意後見受任者)との間で、後見人になった場合に処理してもらう事項(例えば、財産管理や処分等)に関する契約(任意後見契約)を結んでおく、という方法です。

そして、ご本人が判断能力を失った場合、親族などの申立てにより、比較的短時間のうちに(おおむね1か月以内に)家庭裁判所が後見開始(任意後見監督人選任)を決定し、任意後見受任者が任意後見人となって、ご本人に代わって任意後見契約で決められた事項を処理することができます。

例えば、現社長が後継者である長男を任意後見受任者として任意後見契約を結び、自分が判断能力を失った場合に長男が自分に代わって株主としての権限を行使することとしておけば、万が一社長が倒れた場合にも対応できる、というわけです。

 

この任意後見制度を利用するためには、予め、公正証書によって任意後見契約を締結しなければならないこと、任意後見人の権限を予め決めて任意後見契約に記載しておく必要があることなど、多少の手間暇はかかりますが、経営者の判断能力に障害が生じた場合にも会社が円滑に運営を続けていくために必要なリスクマネージメントの一つであり、是非準備しておきたいところです。

 

当プロジェクトチームには、任意後見制度の経験豊富な弁護士、司法書士等の専門家が揃っていますので、一度、ご相談されることをお勧めします。


以上
創新事業承継プロジェクトチーム 吉岡毅法律事務所 弁護士 吉岡毅

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