承継いろは vol.44

「事業所閉鎖における対応について」

 

雇用条件について勤務地限定等の特約がある場合には、当該事業所の閉鎖に伴い、勤務場所がなくなるため、整理解雇の必要性が肯定され易いと言えます。しかし、整理解雇の必要性があれば直ちに有効ということではなく、整理解雇法理に照らし、解雇回避努力を尽くしていること等の要件を満たすことが必要です。特約がある場合、転勤を命じることはできませんが、そのような状況においても、他の事業所への転勤を本人に提案する等の対応が求められます。

① 勤務場所を限定する特約がある場合
事業所の閉鎖の様な業務上の必要があって転勤を命じた場合であっても、使用者が一方的にその変更を命じることはできません。また、転勤を本人から拒否されたからといって、転勤命令拒否を理由に懲戒解雇はできないと思われます。しかし、勤務場所がなくなるという事態であれば、会社都合による整理解雇が可能となる余地があります。

② 勤務場所を特定していない場合
業務上の必要に応じて、転勤を命じることができ、この命令を拒否した場合には、業務命令違反を理由とする懲戒解雇が可能です。もっとも就業規則へ明記されていることが前提です。
ただし、事業場廃止を理由とする転勤命令であれば、もともとは経営上の都合によるものであり、普通解雇にとどめるか、もしくは本人が退職を望む場合には、会社都合の退職扱いとするケースも多くみられます。

③ 転勤命令権について
転勤命令権がある場合についても、労働者に著しい不利益を与える特段の事情がある場合には転勤を命じることはできません。例えば、家族に病人が存在し、介護のために転勤が難しいというような場合には、転勤命令は権利濫用として無効とされる場合があります。  事業所廃止に際して、雇用を確保するためという高度の必要性がある場合には、多少、不利益性が大きくとも認められる場合が多いと思われます。

④ 整理解雇の4要素
1)整理解雇の必要性 2)人選の合理性 3)解雇回避努力 4)適正手続
以上4要素を総合勘案して解雇の妥当性は判断されます。
勤務場所が限定されており、その勤務場所自体がなくなる場合には、整理解雇の必要性や人選の合理性は確保されていると言えますので、あとは、解雇に至るまでの対応として、3)解雇回避努力と4)適正手続(従業員との協議、説明)を満たす必要があります。  解雇の前提となる、事業場廃止の必要性は、経営判断の問題であり特段の事情がない限り(組合潰しのため等)は、企業判断が尊重され、その必要性が否定されることは少ないと考えます。ただし、一方的な対応に終始し、解雇を断行すると「適正手続」の点で問題が生じる場合がありますので、従業員への十分な説明を実施することが不可欠です。

⑤ 解雇回避努力として何をすべきか
具体的な方策は、企業の実情、人員削減の必要性、緊急性等により異なります。例えば、1拠点としての支店レベルでは収支が赤字であっても、企業全体では経営状況がそれほど深刻ではない場合については、企業側に要求される解雇回避努力のレベルは非常に高いものとなります。
勤務地限定特約等があるケースでは、以下の様な対策が考えられます。   1)転勤の提案   2)転職先のあっせん   3)退職金の割増による退職の合意取り付け   4)再就職支援会社の利用   5)一定期間の賃金補償による再就職支援

1)転勤の提案については、雇用維持のために他の勤務場所を提案することが、解雇回避努力として評価されることとなります。受け入れ先が確保できない場合、あるいは、本人が転勤を希望しない場合は、社内での雇用の維持が図れないことになりますが、その場合でも、2)以下の対応を行い、何らかの対応を行うのが望ましいと考えます。

【判例等】
○ 東洋水産川崎工場事件(平14.12.27 労判847号第58頁)
工場閉鎖を理由になされた整理解雇の効力に関し、老朽化した工場を閉鎖する旨の決定は合理的なものであること、就業場所が当該工場に限定されていたとしても雇用確保の努力が不要になるものではないが、本件では、転勤や関係会社への出向・転勤の現実的可能性はなかったこと、組合との団交において解雇の必要性を説明していること、退職金の上乗せや再就職支援会社の利用機会の提供を提案していることなどから、解雇権濫用にあたるものではないとされた事件。

以上

創新事業承継プロジェクトチーム 社会保険労務士 小泉 薫

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